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P-T境界層の現地研修を開催しました!(岩泉観光ガイド協会)

岩泉観光ガイド協会より、ジオガイド研修会の活動報告がありましたので紹介します!

岩泉観光ガイド協会 第5回ジオガイド研修会
三陸ジオパークジオサイト「P-T境界層」現地研修

 11月3日(月)、岩泉町安家地区においてジオサイト「P-T境界層」の現地研修を開催しました。講師は、東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻助教の高橋聡先生です。岩泉観光ガイド協会のガイドら18名が参加しました。
 P-T境界層は、2006年、当時東北大学大学院生だった高橋先生らの研究チームによって発見された地層で、安家川の上流、奥岩泉道と呼ばれる林道沿いに露頭が続く大鳥層に属しています。今回はここで見られる地層を順番に観察し、岩石の色など特徴の違いを確かめながら、地球史上最大の生物大絶滅事件についてお話いただきました。

高橋聡先生

高橋聡先生

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1.赤色チャート
 チャートとは、ガラスの殻を持つプランクトン「放散虫」の殻などが深海底に堆積してできたガラス質の岩石です。年代は、石炭紀とペルム紀の境目にあたる約3億年前と推定されています。チャートの色が赤いのは鉄が錆びたもので、当時は酸素濃度が非常に高かったと考えられます。そのため昆虫が巨大化し、70cmのトンボ、1mある海のサソリなどがいたそうです。

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2.マンガンノジュールを含む泥岩
 黒っぽい泥の粒子でできた泥岩で、海水中のマンガンが沈殿して塊となった「マンガンノジュール」が含まれています。マンガンの中は化石の保存状態が非常に良く、この地点の岩石からも中期ジュラ紀を示す放散虫の化石を抽出できたことで約1億7,000万年前の地層であることが分かりました。このような泥やチャートの硬い岩石は私たちが住む岩泉の基盤となっています。

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3.灰色チャート
 赤色チャートと同じく、深海で溜まった放散虫の殻から成るチャートですが、色が違い、灰色をしています。その理由は酸化した鉄がほとんど入っていないためで、このチャートが堆積したペルム紀は、赤色チャートの時代に比べて深海の酸素が減少していたと考えられています。

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4.黒色粘土岩層【P-T境界層】
 まずは「黒い」という印象を持ちますが、その理由の一つは黄鉄鉱が多量に含まれていることです。これが堆積した環境を探る答えの一つとして、赤色チャート、灰色チャートの時代に比べて深海に全く酸素が及ばない時代があったと考えられており、それが約2億5,000万年前、ペルム紀のちょうど終わりです。発見された化石から、古生代ペルム紀と中生代三畳紀の境界を示す地層の範囲が分かり、当時の深海の様子を世界に発信する貴重な研究資料となっています。

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 各ポイントの地層はどのような環境下で堆積したのか、大陸の配置を落ち葉で表現したり、私たちに馴染みのある茂師竜と関連させたりするなど、丁寧で楽しい解説をしていただき、大昔の地球を想像しながら辿ることができました。
 私たちが生きている間に起こる地球の変化はわずかなものですが、1億年以上の変遷を連続して見られることで、地球は常に動き、生きているということを実感できるジオサイトだと思います。東京から調査にいらっしゃった短い日程の中、お時間をくださった高橋先生へ、重ねて感謝申し上げます。

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