海の恵み豊かな三陸海岸と沖合の世界有数の漁場
三陸海岸は、その景観美と並んで、新鮮でおいしい魚介も魅力です。世界有数の漁場として知られる三陸沖は、魚を求めて日本各地から漁船が集まってきます。また、三陸沿岸ではウニ、アワビ、ワカメなどの漁も盛んに行われています。これら海の幸にも、地球の活動が大きくかかわっています。
宮古市付近より南側は、岬と入り江が入り組んだ複雑な地形のリアス海岸であり、天然の良港として活用され、養殖などの漁業が営まれています。一方、宮古市付近より北側は、断崖が連なる隆起海岸になっており、地形を活かした沿岸漁業が営まれています。
また、宮古市の岩手県立水産科学館などで、三陸沖の魚介類や養殖技術、昔ながらの漁業漁村を目で見て学ぶこともできます。
海流とリアス海岸が生み出した世界有数の漁場
三陸海岸の沖合いは太平洋プレートの沈み込みで深くなっており、日本海溝まで到達しています。この海は北東大西洋海域、北西大西洋海域と並んで世界有数の漁場のひとつとされています。
漁場の形成には、海流が大きく関係しています。カムチャッカ半島のそばを南下した親潮は、北海道と三陸の沖合いに達します。親潮は栄養分に富んだ海流で、名前のように海洋生物を育みます。三陸沖で、南から流れてくる暖流の黒潮とぶつかると、冷たい親潮の豊富な栄養が黒潮に温められて植物プランクトンが爆発的に増え、それを餌とする動物プランクトンが集まってきます。その動物プランクトンを狙って小魚が集まり、さらにその小魚を餌とするサンマ、カツオ、サバなどが集まるのです。こうして、三陸沖の海の地形と海流の働きが、世界的にも希少な漁場を形成しています。
この三陸沖の豊富な魚を求めて、日本各地から漁船が集まってきます。県内では山田漁港、大槌漁港、釜石漁港、大船渡漁港などの漁船が操業しており、東北一の水揚げを誇る宮城県の気仙沼漁港も、三陸沖を漁場としています。併せて、宮古市の岩手県立水産科学館などでは、魚貝類や養殖技術についての資料などを展示し、三陸の海を紹介しています。
マグマがつくった複雑な海岸と漁業
宮古市付近より南側は、岬と入り江が入り組んだ複雑な地形のリアス海岸になっています。このようなところは外海にくらべて波が低く、ある程度の水深もあります。そのため、天然の良港として活用され、沿岸漁業の基地となったり、養殖などの漁業が営まれています。
一方、宮古市付近より北側は、断崖が連なる隆起海岸になっています。入り組んだ岩礁や、断崖を侵食して穴が開いた海食洞がある場所では、沿岸漁業が営まれています。
なかでも久慈市の小袖海岸周辺は、白亜紀にマグマが固まってできた花崗岩や火山岩が分布しており、波がこれらを侵食して複雑な岩礁や「つりがね洞」などの海食洞を造っています。そしてそのような場所には、ウニやアワビ、アイナメやソイなどの岩礁を好む魚介類が多く生息しています。
小袖海岸の柱状節理と海女
小袖海岸は、海女の北限として知られています。シーズン中には、沿岸でウニ、アワビなどの素潜り漁をする海女の姿を見ることもできます。
小袖漁港には「夫婦岩」があり、たくさんの岩の柱が斜めに積み重ねられたような形をしています。この柱状のものは「柱状節理」といいます。小袖海岸に噴出した白亜紀のマグマが冷えて、表面から固まっていく過程でできた隙間です。溶岩の表面に垂直に隙間が伸びていくので柱のような形になります。よく揃っている柱状節理の断面は五角形や六角形をしています。
小袖海岸では、このように太古にできた柱状節理の形と、その上で体を休める海女の姿がなんとも対照的です。
地殻変動がつくりだした地質・地形に、海流や波浪などの海の作用があいまって、豊かな海の恵みをもたらす三陸海岸。海の幸を楽しみながら実感できるのが小袖海岸周辺です。