三葉虫フィリップシア 大船渡市日頃市町 前期石炭紀 日頃市層:岩手県立博物館所蔵

「三陸地域」には、国内では珍しい古生代から中生代の貴重な地質をはじめ、現在に至るまでの様々な地質(地層・岩体)が寄せ合わさって形成されています。
国内研究の先駆けとなった化石や、連続性が良く標準層序とされた地層も数多く分布し、地球規模の変動や生物の繁栄と絶滅の歴史を理解する上で、世界的にも恵まれた地域となっています。また、大きな恵みをもたらした鉄や金等の多様な鉱床もこの中で育まれた資源であり、「リアス海岸」や「隆起海岸」に代表される国内屈指の景観美もこれら地質形成史の中で形づくられた資源です。

5億年以上の歴史をもつ北上山地

三陸地域の内陸部は、北上山地と呼ばれるなだらかな山地になっています。その中央部に位置する早池峰連峰の岩盤は5億年以上の歴史があり、形成過程の全く異なる南北地域の境界となっています。

南部北上山地は赤道付近にあった

早池峰連峰以南の南部北上山地の古生代の地層は、およそ4億年前にはゴンドワナとよばれる巨大大陸の北縁(現在の赤道付近)にあったと考えられており、その後、プレートの移動によって大陸から分離・移動してきました。
これは、アンモナイトや三葉虫、植物をはじめとする浅い海~陸地で生きていた生物の化石からわかってきました。

混ざり合った海の堆積物 北部北上山地

北部北上山地の大部分は、現在の日本海溝で起こっているようなプレートの沈み込みによって、様々な位置・深さの海洋堆積物が極めて複雑に混在する地層が形成されました。全く異なる環境で形成された南北の地層は、プレートの移動によって1億年以上前に衝突したと考えられています。その後も大規模な火山活動や生物の繁栄・絶滅の歴史が繰り広げられ、現在の三陸地域の土台が形成されました。