太古の地層と鉱物資源そして震災の記憶を後世へ、南三陸

釜石鉱山跡(釜石市)

釜石鉱山(釜石市)

大槌町・釜石市・住田町・大船渡市・陸前高田市・気仙沼市

南部エリアは大地の恵みである資源の宝庫です。平泉の黄金文化を支えたと伝えられる気仙地方の金山や、日本有数の磁鉄鉱、黄銅鉱の産出量を誇った釜石鉱山、セメントの原料として現在も採掘が続く大船渡市周辺の石灰石鉱山など、豊富な鉱物資源は人々の暮らしに大きな影響を与えてきました。

そのため、現存する日本最古の洋式高炉跡である橋野鉄鉱山(釜石市)など、日本の鉱山史を語る上で切り離すことのできない遺構が数多く残されています。

今出山金山跡(大船渡市)

今出山金山跡(大船渡市)

橋野高炉跡(釜石市)

橋野鉄鉱山(釜石市)

これらの資源を育んだ地質は、日本で初めて発見された古生代シルル紀(4億4千万年前頃)の化石産地をはじめ、中生代三畳紀(2億5千万年前頃)までを連続的に観察できる、学術的にも貴重なエリアです。

また南部エリアは、東北地方太平洋沖地震に伴う津波で極めて甚大な被害が出た地域でもあります。大槌小鎚(大槌町)、根浜・鵜住居(釜石市)、大船渡湾(大船渡市)、高田松原(陸前高田市)、気仙沼湾(気仙沼市)など多くのジオサイトで、地元ガイドが津波の脅威を語り伝えています。

大槌小鎚(大槌町)

大槌小鎚(大槌町)

陸前高田語り部ガイド

陸前高田語り部ガイド

リアス海岸がつくる景観美

地形に目をやると、碁石海岸、唐桑半島などの景観美が見るものの目を止めます。水深の深い入り江は天然の良港となり、複雑な岩礁が沿岸の海洋資源を育んできました。繰り返される地球活動への理解を深め、現在進行形で進められる防災・減災のまちづくりとともに、ジオの恵みも感じ味わってください。

大理石海岸

大理石海岸(気仙沼市)

ちょっと専門的なお話 南部エリアのジオ

南部エリアには、北上山地が超大陸ゴンドワナの一部であった4億5千万年前ころに、マグマが地下の深いところで固まった氷上花こう岩類(陸前高田市)や、その後の時代に浅海で堆積した地層が広く分布しています。後者は、北上山地のうち早池峰山以南に広く分布する古生代~中生代の地層で、「南部北上帯」と呼ばれています。

これらの古い大地には、平泉の黄金文化を支えた気仙産金や、日本有数の産出量を誇った釜石鉱山(釜石市)の磁鉄鉱や黄銅鉱、セメント原料として現在も採掘が続く大船渡市周辺の石灰岩など、豊富な鉱物資源が含まれています。

こうした地質を背景にして、日本最古の洋式高炉跡として今も残る橋野鉄鉱山(釜石市)が誕生しました。これ以外にも日本の鉱山史を語る上で切り離すことのできない遺構が数多く残されています。

南部北上帯では国内の地質学・古生物学の黎明期から研究が進められ、世界的にも対比されるような保存状態・連続性の良い生物化石が数多く産出します。1937(昭和12)年には当時日本最古の地層とされた古生代シルル紀の化石産地(大船渡市)が発見されました。

古い地層がそのまま顔を出す海岸の地形を見ると、入り組んだ岬や入江で知られるリアス海岸が続きます。なかでも碁石海岸(大船渡市)や唐桑半島(気仙沼市)などの景観美は見るものの目を止めます。水深の深い入り江は天然の良港となるとともに、複雑な岩礁が沿岸の海洋資源を育んでいます。

このリアス海岸は、湾の入り口から奥に向かって幅が狭く、また水深が浅くなるため、津波の波高が大きく増幅されます。そのため、中部~南部エリアは幾度も津波災害に見舞われてきました。

特に南部エリアは、東北地方太平洋沖地震に伴う津波で極めて甚大な被害が出ました。大槌小鎚(大槌町)、根浜・鵜住居(釜石市)、大船渡湾(大船渡市)、高田松原(陸前高田市)、気仙沼湾(気仙沼市)など多くのサイトで、地元ガイドが津波の脅威を語り伝えています。