津波の威力は地形の影響を受けて変化します。沖合ではそれほど高さのない津波も、陸にV字に切り込んだ浅い入り江に到達すると海水は行き場を失って高さを増し、陸地に押し寄せます。同じ地震で発生した津波でも、地域によって到達する高さに違いが生まれます。
威力を増した津波は、時に海岸の船舶や消波ブロック、巨岩などを内陸に運びます。このうち「津波石」と呼ばれる巨岩は、過去の歴史津波で運ばれたものが各地に残されています。
羅賀の津波石(らがのつなみいし)は、海岸から約250m内陸の標高28mの畑のなかにある。長さ約3m、横幅約2m、高さは一部が地中に埋まっているものの地表に1m以上あり、重さは約20tと推計されています。地元住民の言い伝えや、海岸線にある白亜紀の地層と同じくオルビトリナと呼ばれる有孔虫の化石を含んでいることから、もともと海岸付近にあった石であることが証明されています。
羅賀の津波石を運んだとされる明治三陸津波は、当時の羅賀地区全32戸のうち16戸の家屋を流失させ、死者122名、重傷者10名の被害を出しました(山下文男著『哀史三陸大津波』より)。